俺は何がしたい

30代男の日々感じたこと

いい雲ですね

ざわざわと音を立てる木々の向こうには、どんな景色が広がっているのかな?

 

子供の頃はそんなことばかり考えていたような気がする。

 

今はといえば、夏風に身を揺らす木々たちを眺めながらも、まさか高速道路で車を路駐して探検を始める訳にもいかず、ただただ景色を横目に通り過ぎるだけ。

 

いつからか、特に残念にも思わなくなった。

 

 

先日、職場の女の子が、突然に辞めた。

 

本人にどんな考えがあってのことなのか、その決断は戦いなのか逃避なのか、そんなことを詮索するつもりはないけど、せっかくだし今年の夏を満喫して欲しいなとか、お節介ながら思っている。

 

社会生活は沢山のことに追われる日々だ。

追われて追われてせかせか急いでいるうちに、沢山の景色を見過ごしてしまっている。

 

人間の歩く歩調は今も昔も変わらないのに、社会のスピードは早くなるばっかりだ。

 

今も昔も景色はそこにあるのに、きっと通り過ぎる人の方が多くなった。

 

 

「いい雲ですね」

 

ある日、彼女がそう言って目配せた空には、西陽を受けた入道雲がゆうゆうと立ち上っていて、私はすっかり足を止められてしまった。

 

転職したばかりのあの日、転職前からせかせか動いていたせいか季節をひとつ通り過ぎていたことにも気付かずにいたのだが、空を見上げながら「夏がくるな」としみじみと思った。

 

どうか、その素敵な目を持ったまま、今年の夏をゆっくりと満喫して欲しいなと、重ね重ねお節介ながら思う。

 

お元気で。